電子書籍はなぜつまらないのか-私の仮説と実験の結果「Kindle派に転向しました」
一昔前はよく言われていたものでした。
「パソコンで本読んでも面白くないよね」
どうしてなのか誰にも解らず「本みたいに手元に持って読めないからかな?」とかそんなことを漠然と話し、読書好きな人の多くは「やっぱり紙の本」という方針を固めたのでした。
そして今、スマホで電子書籍が読めるようになりましたが…
「スマホで本読んでも面白くないよね」
…手元に持って読んでますが…なんで?
理由としてよく挙がるのが、ページをめくるというアクションがないと物足りないというもの。
確かに。
分かります。めくりたいですよね。
でもさ…
じゃあ何?私はめくりたくて本を読んでいたの?
それはそれで違う気がする…と言うより絶対違う(笑)
めくる楽しさは大いに認めるところですが、少なくとも読書の喜びのメインではないはずです。
「きっと他の思いがけない「何か」が影響してるんだろう」と思ってはみても、「私が考えて分かるわけないわ」と、かたくなに紙の本派を通してきました。
ところが先日、全然関係ないことを調べていて偶然ある仮説が浮かんだのでした。
Contents
電子書籍がつまらない理由(仮説)
川沿いだと楽に走れるのは遠くを見ているから
偶然知ったことというのはコレです。
「遠くを見る時には交感神経が働いている」
私は趣味でランニングしています。
断然走りやすいのは、川沿いのテラスです。
シューズを履いて家を出て走り出しても気分が乗らず、「今日やめようかな?」と思った日でも、川まで着いてテラスを走り出すと不思議と走りたい気持ちが湧いてきます。
「あれ?これなら余裕だな」と思って川沿いを走り、「まだまだ走れるけど時間ないし」と、川から離れて一般道路に戻るとまた「たりぃ…」
なぜ川沿いだと走れるのか、ずっと疑問でした。川の水からなんか出てるんじゃないかと思ったりとか(笑)
でも、交感神経で説明がつきます。
川沿いでは自然に遠くを見ることになり、交感神経が活発になるからピッピと走れるのではないですかね。
原始の時代に獲物を追ってる感じになるというかね。
近くの物を見る時には副交感神経が働いている
近くを見る時は副交感神経優位になります。
本を読む場合、目と対象物(本)の距離は大体25センチから30センチが一般的と思いますが、そういう時は副交感神経。
なるほど分かる。すげー分かるよ。
日頃注意力散漫な私でも、読書になら簡単に集中できるのは、本と目が近いからだったのですね。
集中って、リラックスに属するものです。緊張ではなくリラックス。
近くを見ることで副交感神経が活発になってリラックスした状態になるから、読書には集中できると。
本を読んでいる時のあの心地のよさは、副交感神経のチカラ。
リラックス下で物語に没入する読書の喜びに、目と本の距離が関係していたとは意外です。
…で、そこでやっぱり不思議に思うわけです。
スマホで本読んでもイマイチなのはなぜ?
光は本来交感神経をアップさせるモノ
スマホなら目からの距離は本と同じくらいになるはずです。
でもスマホで電子書籍を読んでも紙の本のあの快感は得られません。
スマホの何かがリラックス効果を阻害している…?
スマホと紙の本の決定的な違いといえば光を放っているかどうかでしょう。
光が目に入ると交感神経が活発になるのは良く知られている通り。
交感神経と副交感神経はシーソーのような関係で、一方が上がればもう一方は下がります。
これか?!
光るデバイスを近くで見るとき脳は混乱している?
ここまでの話をまとめると
近くを見る時は副交感神経優位でリラックスモード
紙の本を読んでいるときはまさにこの状態
スマホでも目からの距離は変わらないはずですが…
光が目に入ると交感神経が働く
相対的に副交感神経の働きは弱まって読書に向いた状態ではなくなる…?
…
スマホの光で脳が「読書に不向きのコンディションになる」のかどうか、素人の私に断言できることではありません。
でも、
近くを見る=副交感神経
と
光を見る=交感神経
スマホを見る時、このふたつが同時に起きているわけで、脳は混乱しているのでは?
考えて見れば、元々自然界では、光を放つものを手元に置いて眺めることなどなかったのです。
太古の昔、光とは1億5千万キロほど遠くにあるものでした。太陽です。
焚火だって顔から25センチのとこでは焚かないしスマホのように強い光ではありません。
スマホを見ている状態というのはとても不自然なものです。
スマホと目との距離とスマホの発する光が「脳を混乱させる」とまで言えるのかどうかはともかく、少なくとも紙の本を読んでいる時とスマホで電子書籍を読んでいる時とでは脳の状態が違うとは言えるでしょう。
PCの普及と並行してうつが増えた理由ももしかして…素人の戯言はやめときましょう。(でもどなたか専門の方に研究して欲しい!)
電子書籍がつまらない原因が光りだとすれば
電子書籍が紙の本に比べて楽しくない理由を、「光をまともに見てしまうので副交感神経モードに入れないから」だと仮定(あくまで素人の仮定です)すると、問題は、めくれない等の形状ではなく、光ることで画面を表示するという液晶ディスプレイの特性のほうにあることになります。
デバイスは発光せず周囲の明かりで見るディスプレイがあれば電子書籍いまいち問題解決?
…
……それって、もうあるんじゃ…
電子ペーパーディスプレイなら
電子ペーパーの構造についてはWikipedia見てください(笑)
ここで重要なのは、電子ペーパーは自分が光って見させるものではないということです。
紙と同じように反射光で見せるのが電子ペーパー。電子ペーパーが光るのではなく照明や太陽光を反射して見せています。
これなら電子書籍つまらない問題解消できるんじゃ…
というか電子ペーパーの電子書籍リーダーってもうあるよね…かなり前から(笑)
私はこれまで電子書籍を避けてきたので、電子書籍リーダーにも興味がなくてスルーしていたのですが、たとえばKindleリーダーは、E Inkを使った端末です。
E Inkというのは、電子ペーパーの技術開発企業の名で、今では電子ペーパーの代名詞になっています。
Kindleリーダーは、E Inkを使ったディスプレイで読ませる電子書籍専用端末。端末に埋め込まれたライトで光らせることもできますが、ライトを完全オフにしても読めるデバイスです。
上に書いた素人仮説が正しければ、Kindleリーダーなら紙の本に遜色ない読書の快感が得られるはず。
そう思ってあちこちのブログを見ると、Kindleリーダーを使って読書量が増えた、目が疲れなくなった等のレビューはたくさん見つかりますが、私の知りたい「読書のリラックス効果、読書の快感が得られるのかどうか」に言及している人は見当たりません。
自分で試してみるしかないか…
実験のためKindleペーパーホワイトを買った!
そんなわけで電子書籍を読むための専用端末を買うことにしました。
主目的は「E Inkリーダーは紙の本と同様の快感をもたらすか否か実験」ですが、いずれにしろ、そろそろ電子書籍を受け入れざるを得ない状況(出版から数年で紙の本が絶版され電子書籍しか手に入らないことがたびたび…)になりつつあるのも感じていたので、まあ潮時でもあるかなと。
で、何を買うかです。
2020年、日本で簡単に入手できる電子ペーパーの電子書籍リーダーというと、Amazon Kindleシリーズと楽天Koboです。
とりあえずこれまでに(不本意ながら)電子書籍数冊を購入しているアマゾンのほうが都合がいいのでKindleにすることに。
Kindleには無印、ペーパーホワイト、オアシスの3機種があり、一番人気はペーパーホワイトだそう。
使って見て「やっぱダメ」だったら…と思うと一番安い無印でいいかとも考えたのですが、解析度が違います。
無印は167ppi、ペーパーホワイト(PW)は300ppi。
簡単に言ったら、解析度が低いと文字の輪郭がギザギザする、高いほどなめらかってことです。
今回「より紙っぽく」見えることにこわだりたかったのと、解析度が低いと目が疲れるらしいのとで、文字の輪郭も紙の本のようにきれいだと評判のペーパーホワイトに決めました。
実験結果:Kindle PaperWhiteで紙の本と同じ快感読書ができるか
答はYESです。
PW(ペーパーホワイト)を手に持って読む、紙の本に使っている書見台に置いて読む、ベッドに入って寝る前に読む(PWのライトは使わず電気スタンドの灯りで)、お風呂で読む、晴天の日のバス停で読む等々一通りやってみました。
全然つまらなくありません。まじです。
「電子書籍だと本がつまらなく感じる問題」は、E Ink端末によってクリアされているように感じます。
サイズも文庫本とあまり変わらないこともあり、紙読書と同じ姿勢で読めますし、読むうちに本に没頭するあの心地よさも紙本と同じです。
過去にスマホで読破した電子書籍をKindleリーダーで再読してみたら、半分以下の日数で読みきってしまった
つまらないか面白いかは、読む本によっても違います(当たり前!)
そこで、前にスマホで読んでいた本をもう一度PWで読んでみる検証もしてみました。
上下巻で結構な長さです。
2年ほど前に読みたくなって探した時にはもう紙の本は売られていませんでした。
当時の私にはPCかスマホしか電子書籍を読む手段がなく、「スマホで本読んでも面白くないよね」の状態でしたが、どうしても読みたかったのでAmazonで買ったのでした。
いえ。スマホで読んでも面白い本でしたよ。
ストーリーがいいのは分かりました。本自体は面白かったのです。
でも、読むこと自体のあの快感があったかと聞かれると、ちょっと…。物語を追って「ああ面白い本だな」と、冷めた意識でそう考えている感じでした。
同じ本をペーパーホワイトで読んでみると…
来た!来ましたよ。本に入り込むあの感覚。読書の喜びが。
そうそう。こうでなくっちゃ!
楽しくて、スマホ読みだった2年前には読了に2週間近くかかった本を足かけ4日で読んじゃいました。
多忙度は今の方が高いくらいなのですが、読み始めたら止まらないモードに入ったのでどんどんページが進みました。
良かった。Kindleを買って良かったし、もう一度この本を読んで本当に良かった。
電子書籍つまらない問題は、とっくに解決されていました。少なくとも私にとっては完全解決です。
それどころか…
E Inkが紙の本に勝ってる点も
お風呂読みに最適
これはPW、Oasis限定で一番安い無印Kindleではダメなのですが、防水機能が装備されているので、お風呂で読むときも余計な気を使わなくて済みます。
これまで紙本持ってお風呂入ってましたけども(笑)、バスタブに浸かりながら読むときには、お湯に本がつかないように結構高く本を掲げなければならず、これが案外疲れる…落としてダメにしちゃった本が何冊もあります。
防水Kindleならそんな懸念は無用です。
まずこれが一番大きな紙本超えポイントです。
濡れた手で持っても大丈夫
お風呂読みと同じことで、PWの防水機能がここでも活かされます。
雨の中傘も差さずに読むわけじゃないですけど、電車やバスに乗るときのことです。
雨の日、傘を畳んだ手はすぐには乾きません。
手の水気がなくなるまで、紙の本はバッグから取り出すこともできませんが、PWならそこまで神経質にならなくても平気です。
「雨水がついて気持ち悪いな」と思ったら、水洗いしたっていいのです。
この「濡れた傘を畳んだ手でも触れる」というのも地味に効いています。
日光の下でも読める
本好きな人なら試した経験があると思いますが、すごく天気のいい日に屋外で本読むのって実は不可能ですよね。
本のページが日光を反射しちゃうので、まぶしくてとても文字が読めません。…が、Kindleだと読めるんですよこれ。
Kindleにはダークモードという、白黒が反転して地が黒、文字を白で表示するモードがあります。
私は常時こっちのダークモードで読んでいますが、これだと光を反射する白の面積がとても狭いので日光の下でも普通に読めます。
屋根のないバス停に昼の12時に並んでも大丈夫。
これは意外なメリットでした。
持ち歩く時に折れを気にしなくていい
バッグに入れて本を持ち歩くと、ページの端が折れてしまったり、買い物した後にスマホやお財布をバッグに戻す時にうっかりページの間に入れて数ページに渡ってクシャっといっちゃったりしがちですよね。
なのでブックバンドを巻いたり、本をハンカチに包んで持ち歩いたりしていたのですが、Kindleにしてからそのストレスがなくなりました。
もちろん寝落ちしてベッドと壁の隙間落ちた本がグシャっというのもありません。
本を折ってしまった時のあのショックを受けずに済むようになって、とても快適です。
持ち歩く時に本の残ページ量を気にしなくていい
これも「あるある」でしょう。
荷物に入れようとする本の読み進み具合が外出中に読み切ってしまうかどうか微妙だった場合、もう1冊持ったり、まだ読んでいない本だけを持って出かけたりする必要があります。
日常の通勤などならその日に読んでしまう量も大体想像がつきますが、旅行や出張だとどれくらい読めちゃうのか予想するのも難しくて困ります。
Kindleなら何冊も(上限はありますが)ダウンロードして持ち歩けるので、本棚ごと持ち歩いているようなものです。この心配はいらなくなります。
なんなら上下巻の上しか持っていない状態で新幹線内で読み切っちゃっても、その場でKindleデバイスから下巻を買うことも可能です。
(これはスマホでも同じではあるのですが…)
紙の本に負けてる点
めくれない(笑)
結局それかって。
めくれないことと言うより、紙の本のあの「本らしさ」、王道感はやっぱりKindleリーダーでは再現できないですね。
もっともこれは、折れ濡れ汚れを気にしなくていいというKindleの長所と背中合わせの要素だと思いますが。
紙の本を広げている時の「大切なものを読んでいる」という感覚は、紙は折れ目がついたら完全に消すことはできないし、汚れても洗い落とすことはできないという不可逆性に由来しているように感じるので。
今のところE Inkはモノクロ
カラーのE Inkもあることはあるらしいですが、コストや表示にかかる時間の問題が大きく、Kindleリーダーには実装されていません。
なのでKindleリーダーで読む場合には、カラーの絵や写真もモノクロになってしまいます。
画像や図解の多い本を読むのには向いていません。
小説などの、文字だけで表現される媒体を読むのに特化したデバイスだと言っちゃっていいと思います。
漫画、雑誌等の電子版をたくさん読む人はKindleリーダーではなくタブレットにしたほうがいいです。
Kindle PW2ヶ月を過ごしての感想
最っ高です。
どこでも読めますし、濡れた手でもハンドクリームを塗った直後の手でも読めるので、今では常にPWを持ち歩いています。
これまで、ちょっとした隙間時間はスマホを見ることが多かったのですが、今ではスマホなんか見向きもせずにPWばっか見てます。
光るデバイスは脳を混乱させるという素人仮説からも、これはいいことかと。(あくまで私が勝手に言ってるだけの仮説なのですが)
読書量も増えました。
本って、読めば読むほど読みたくなるもので、読みたい本も増えてしまったので、むしろちょっと困るかも(笑)
とにかく!
E Inkリーダーはよいものです。
ほとんどの人が、最初の電子書籍はPCかスマホで読むことでしょう。
そうすると電子書籍に失望してしまうので専用デバイスまで試そうとは思わず、E InkディスプレイのKindleリーダーやKOBOを買うことを検討すらしない人が大半で、端末人気も伸び悩み、結果として使った評判を聞くこともなく何年も経過…というのが現状だと思います。
でも、これを使わないなんてすごくもったいないです。
2か月前まで「電子書籍では読書の楽しさが味わえない」と言っていた私が今では「Oasisも買おうかなー?」と思いはじめたくらいですから。
これまで電子書籍に原因不明の不満を感じていた人、それでも最近電子書籍が気になる人は、ぜひぜひE Inkのデバイスをお試しください。
Amazonユーザーさんなら、最初はやっぱりKindleペーパーホワイトがいいと思います。
人気機種なので、試して好みに合わなかったらメルカリとかで売れますし。
きっと気に入ると思います。フロントライトOFFのダークモードで読むのがおすすめです。
では!Kindle本のセールを物色しに行ってきます。