信用保証協会の債務時効はこうして延長される-時効逃げ切りが無理なわけ
信用保証協会の債務は、企業倒産がらみのものが多く、企業の破産手続きには何年もかかるために時効が代位弁済日の5年後や10年後よりもずっと後になることをお話ししました。
これは、保証協会が時効を延ばしているいるわけではなく、破産手続きにかかる時間によるものですが、本当の時効が近づくと債権回収のプロは、時効延長のための手段を講じてきます。
保証協会以外の債権者も同じ方法で時効を延ばせますが、消費者金融等がどの程度までやるかは私には不明です。
保証協会は、「時効を完成させることはまずない」と言われています。
債務者からの一部返済
債務者(連帯保証人もその相続人も同様に債務者です)が、債務を一部でも返済すると、時効はリセットされ、そこから10年延長されます。
なので、保証協会はまずこの「一部返済」を請求してくるでしょう。
返済しない人もいます。
そういうときは、次の手段です。
保証協会から債務者への催告
債権者は、返済を請求することでも時効を6ヶ月伸ばすことができます。
ただの封書や葉書を郵送しただけでは効力がありません。
保証協会が定期的に送ってくる葉書は、残債の状況を知らせるためのもので、時効を延長する目的ではないです。
時効を延長するためには単なる連絡ではなく「催告」という手段が必要です。
具体的には内容証明を送ってよこすのが一般的です。
内容証明は、送る文書の写しを郵便局に提出しておく郵送の方法で、これによって、いつ誰が誰宛にどんな文書を送達したかを郵便局に証明してもらえますよというものです。
ポストに投函されることはなく、受取にはサインか捺印が必要で、受取を拒否することも可能です。
受取拒否すると、その内容証明は相手方に返送されます。
なら内容証明を受け取らなければいいんじゃないかというと、そんなことはなく…
内容証明は、必ずしも受取人が内容を承知する必要はなく、受取を拒否しても効力が生じます。
保証協会からの催告とみられる内容証明を受取拒否しても、時効の延長は阻止できません。
では、長期不在で受け取ることができなかった場合はどうでしょう?
これも同じです。
配達時に不在であればポストに不在票が投函されます。
内容証明の保管期限は1週間ですが、その間郵便局に連絡せず、そのまま差出人に返送されたケースであっても、保管期限が満了した日に内容証明は「到達」したものとみなされるという判例があるそうです。
判例がある=必ずいつも同じ判決になるというわけではありませんが…
保証協会は絶対に訴訟に負けることはないと言われています。
ひとつには、債権に関する法律を知り尽くしているので、勝てる訴訟しかしないという理由があると思いますが、他に敗訴しない理由として噂されていることがあって…
信用保証協会は、国庫で代位弁済しています。
回収しようとしているのは、言わば国家のお金なので、裁判に負けることはないというものです。
(企業は保証協会に対して信用保証料を支払っていますけれども)
保証協会からの内容証明は、バックレ不可能です。
ただ、催告による事項の延長は、6か月だけで、一度しか延長することができません。
ならば半年逃げ切れれば晴れて時効成立かと言うと、そうも行かず…
債務者に債務承認を要求
催告によって延長できる時効は6ヶ月で、この方法による時効の延長は1度しかできません。
そこで保証協会は、債務の承認を要求してきます。
債務者(相続人でも同じです)が、私には信用保証協会に対する債務がありますと認めることで、時効は10年延長されます。
保証協会の用意した書面に債務者がサインして返送するよう求められる形式になるでしょう。
債務承認書に署名捺印すると、その時点から10年時効が延長されます。
では、サインしなければいいのかと言うと、これも無理です。
保証協会が連帯保証人を提訴
債務者が債務承認書にサインをしない場合でも、債権者が債務者を相手取って訴訟を起こせば、提訴の日から時効は中断され、判決の日から10年延長されます。
元の借り入れ先が銀行であっても、つまり最初の時効が5年であっても延長は10年です。
裁判の前には必ず訴状が送られてきます。
この訴状を受け取らなかったらいいのではないかと考えますが、それも無理です。
訴状は特別送達という郵送方法で発送されます。
正当な理由なく受取拒否のできないもので、拒否した場合は配達員がその場に置いていくだけで送達したものとみなされ、効力を持ちます。(差し置き送達)
同居家族に渡した場合も送達となります(補充送達)
不在であれば不在票が入り、保管期限を過ぎても受け取らない時は、当該の住所に居住していることを確認されてから「付郵便送達」に格上げされます。
これは発送した時点で受取がなされたものとみなされる郵送方法です。
転居して居場所が分からなければ付郵便送達も不可能で訴訟を起こされることはないかと言うと、そうではありません。
八方手を尽くして探しても居所が分からない場合の最後の手段が公示送達です。
裁判所の掲示板に1週間程度の間、送達の意志を記載した文書を掲示すると同時に官報にも掲載する方法で、これをされると、転居先の家を知られていなくても裁判は進行するので、時効は延長されます。
訴状を受け取らないことで時効を成立させるのも不可能と考えてください。
差し押さえ、仮差押え
債権者には、債務者の財産を差し押さえ、仮差し押えする権利があります。
仮差押えを執行されると、その期間は時効が中断します。
信用保証協会の債務に事実上時効はない
保証協会は債権回収のプロです。
合法的に冷徹に時効を延長して来るはずです。
時効で逃げ切るのは至難の業、ほぼ不可能と思ったほうがいいでしょう。