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時効援用に失敗すると相続放棄ができなくなることもあり得ます

2019年1月6日

信用保証協会の債務を相続していることが分かった時、代位弁済日を見ると10年以上前であることは珍しくないと思います。

借金には時効があり、借入先が銀行なら5年、個人や信用金庫なら10年と決まっているはずなので、この債務は時効を過ぎている、請求は無効だと考えて時効援用の手続きを…と考えるかもしれません(私は考えました)。

ネットで検索すると、ネットユーザー同士のQ&Aサイトなんかで、時効援用の内容証明を一通送れば済むと回答されているのを見かけます。

でもこれちょっと危険です。

時効援用という手段が有効なこともある

Q&Aサイトにある「時効援用の内容証明一通でOK」でという回答は、必ずしも間違いではありません。

消費者金融などでは、時効の日を過ぎてしまった債権についても請求してくることがあるようです。

時効と言うのは、債務者(借りた人あるいは連帯保証人やその相続人)側が宣言することで初めて成立するもので、債務者が黙っているうちは債権者の請求権は残っています。

なので、カレンダーの上では時効日を過ぎていてもそれを伏せて請求してくるわけです。

貸した方としては、「これで返してくれればラッキー、時効援用されたらこの債権の事務処理が完了するから、それはそれでまあいいか」と言ったところでしょう。

この場合は、借りた側の時効援用ひとつで時効成立、債務消滅となるので、内容証明を送れば解決します。

Q&Aサイトで回答している人は、そういった経験をもとに善意で教えてものと思います。

でも、これはあくまで実際に時効が完成している場合の話です。

信用保証協会の債務には事実上時効はない

保証協会は、時効で逃がしてくれたりはしません。

詳しくはこちらに

なので、債務を相続していますと通知されたら、ほぼ100%その債務は生きています。

時効援用の書面を送っても、時効が完成していないので意味がありません。

意味がないだけならまだいいのですが、ここには危険がひそんでいます。

時効の援用は債務の承認と解釈される

債務の法定相続人である私たちが、その借金を背負わずに済むようにするために、時効の援用が使えないとなると、あとは相続放棄しかありません。

相続放棄は、簡単に言うと「この相続をしません」と意思表示することです。

被相続人が死亡してからこれまでの間、相続の事実を知らなかった(プラスの財産、マイナスの財産ともに存在を知らなかった、自分に相続権があると知らなかった)場合は、相続放棄によって負債の相続をすることもなくなり、晴れてこの債務と無関係になれます。

でも!

ここで時効援用をした事実が問題になることがあります。

時効を援用するのは、自身にその債務があると承認したからであると解釈されると、時効援用の後に相続放棄はできなくなってしまうのです。

参考:相続放棄と消滅時効の援用

どうか安易に時効援用しないよう気を付けてください。

それでも時効援用するなら事前に時効の確認を

  • 信用保証協会の債務には事実上時効はないものと思ったほうがいい
  • 時効援用に失敗すると相続放棄ができなくなることもある

というお話をしましたが、それでも時効援用にトライしたいというケースもあるかと思います。

たとえば、すでに他の財産を相続してしまったので相続放棄が不可能な場合や、相続を放棄することで他の親戚などに債務が移ってしまうのを避けたい場合などです。

その場合は、援用する前に時効が主張できる状況かどうかを確認してください。

具体的には、保証協会に取引履歴を開示してもらうことになりますが、これには時間がかかるため、先に裁判所に熟慮期間の延長手続きをする必要があります。

熟慮期間というのは、相続放棄をするかしないかを考える期間のことで、「相続を知ってからの3ヶ月」と言う、この「3ヶ月」が熟慮期間です。

この熟慮期間を延長してもらうということです。

必ず延長が認められるわけではなく、申し出にも手間がかかるので、これも弁護士に頼んだほうがいいと思います。

延長した熟慮期間の間に保証協会の取引履歴や破産手続き終結の日付を確認して時効が成立していると確認が出来たら時効援用してください。

どの道相続放棄は無理だと思って、ダメ元で時効援用する?

確かに、どうせ借金を背負うなら時効援用に賭けてみようという考えは理解できます。

でも、これもちょっと待ってほしいのです。

「どの道相続放棄は無理」というのが勘違いかもしれません。

法の適用は、本当にケースバイケースで、できないと思い込んでいた相続放棄ができることもあり得ます。

こんな場合こそ、すぐに諦めず専門家に詳細を相談して下さい。

気付いていない要素が解決の糸口になるかもしれません。