信用保証協会は債務者の預金不動産など資産をどうやって調査するのか
いよいよ信用保証協会の債務を返済しなければならなくなった場合、持つ資産が把握されていると、差し押さえされるかもしれません。
でも債務者が、借りた本人ではなくその連帯保証人だった場合や連帯保証人の法定相続人だった場合、信用保証協会は、どうやってその人の資産を調べるのでしょう。
預貯金
差し押さえられそうな資産としてまず最初に思い浮かぶのは銀行や郵便局の預貯金です。
でも、私たち相続人は、保証協会に銀行口座等を教えていません。
調査のポイントは支店名
強制執行、差し押さえをするためには、債務者の銀行名、支店名が必要です。
逆に言えば、支店名を知られなければ銀行口座を差し押さえられることはないということです。
商取引の未払い事案などなら、それまでの取引等から取引銀行や支店が分かることもあると思いますが、過去にまったく債権者との関わり合いのなかった法定相続人の銀行口座を特定するには、弁護士照会という手段が用いられます。
弁護士は、職務を円滑に進めるための調査が許されていて、銀行への顧客情報開示請求も含まれます。
実際には、弁護士個人として銀行へ請求するのではなく、弁護士から依頼を受けた弁護士会がその正当性を審査したうえで照会をかけることになります。
弁護士照会:全店照会
以前は、銀行本店に照会しても、口座名義人の同意がなければ顧客の口座保有支店は開示しない銀行が多かったのですが、2017年頃から傾向が変わってきています。
どういうことかと言いますと…
以前
弁護士会がM銀行に「Aという人の口座があるか、あるならどの支店か教えてくれ」と紹介しても、M銀行では「まずAさんの同意が必要だ」と答えます。
Aさんとしては、強制執行が目的の照会であると分かり切っている状況で、開示に同意するはずがありません。
結果、M銀行はAさんの支店を開示せず、弁護士照会と言えども無力でした。
2017年頃からの傾向
ところが最近、訴訟に勝訴し、判決書を保有しているなど、強制執行の権利を明確に提示できる場合には、全店照会に応じる銀行が増えています。
具体的には
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
- ゆうちょ銀行
の4行が、預金口座の有無と支店名、預金残高までを開示するようになっています。
メガバンクが全店照会に応じるのは、あくまで判決書、和解調書などを提示された場合です。
とは言っても信用保証協会が全店照会をかけるとしたら、それはまず間違いなく強制執行の権利を得てからのことでしょう。
保証協会は、債権取り立てのプロであり、法律遵守のもと、淡々と確実に仕事を進めます。
2018年の時点では、メガバンクの支店は、隠しようがなく資産額まで知られると思ったほうがいいでしょう。
弁護士照会:全店照会に応じない銀行の場合
上で、「以前は全店照会に応じない銀行が多かった」と書きました。
現在は、メガバンクが開示の方向へ方針を変えたため、照会する弁護士側はだいぶ有利になったのですが、今でも顧客の同意なしには支店を開示しない銀行もあります。
どの銀行がどういった対応をするかは、個々の方針によるので、弁護士照会してみないと分からないのが現状です。
全店照会のできない銀行のどの支店に口座を保有しているかを調査する場合は、ある程度運任せです。
債務者がどの銀行に口座を作っているかも不明な上、支店も想像するしかないので、たいてい債務者の自宅から近い銀行の支店にあたりをつけて照会します。
直接支店に問い合わせて「Aさんの預金口座はそちらの支店にありますか?」と照会するわけです。
当然空振りが多く、照会は1件ごとに数千円(照会する弁護士が所属する弁護士会によって違う)の費用がかかるため、しらみつぶしは現実的ではないでしょう。
なので、メガバンク以外の銀行で、自宅最寄でない銀行、過去の居住地近くの支店や過去の勤務地近くの支店など、想像されにくい支店に預けた資産は、発見されない可能性があります。
今のところは。ですが。
(メガバンクの動きに倣って他の金融機関も同様に全店開示の方針に変わることもあり得ます)
生命保険や個人年金など
生命保険や個人年金といった民間の保険は、銀行と同様弁護士照会で回答を得られます。
この照会にも費用はかかりますが、生命保険協会への照会で全保険会社の契約が分かるので、保険会社各社へ照会する必要はありません。
多額の債務を背負ってしまった場合、保険は解約しておいたほうがいいでしょう。
※もしも債務者や連帯保証人の地位にあるうちに死亡した場合、その人の相続人は相続放棄をすることになると思いますが、相続放棄をしても生命保険の受取人は満額を受け取れます。
ここで話しているのは、掛け金として預けている段階での保険料のことです。
これは債務者の資産になるので、調査が入れば差し押さえの対象になり得ます。
自動車など
車の所有者は、弁護士照会であればナンバープレートの番号で調査できます。
(通常は、ナンバープレートの4桁の他に車両番号という番号がないと照会できません。弁護士照会の場合に限って、ナンバープレートだけで可能です)
ただ、ナンバープレートを知られなければ保有の事実を確かめられることはないので、債権者である保証協会が他県であるなどの場合には、車にまでは調査が及ばないかもしれません。
車を持っていることを知られたら所有の確認は容易なので、差し押さえ対象になる可能性はあります。
もっとも、たくさんたくさんの事例を検索した中で、信用保証協会に車両を差し押さえられた、あるいは、差し押さえると言われたと言う話は見かけませんでした。
高級外車に乗っているならともかく、車はその人の仕事と深くかかわっていることが多く、車がなくなれば収入を得るのが困難になるケースもあるでしょう。
わざわざ手間をかけて差し押さえるよりも、そのまま債務者に所有させた方が返済の見込みが大きい場合には、手を出してこないのかもしれません。
車は、経年劣化による資産価値の減少の激しいものなので、売却しても思うような価格がつかないことも関係しているでしょう。
保証協会の目的は、あくまで債権の回収です。
生活や仕事のため、ひいては返済のため、車はなくてはならないものだと説明すれば、強硬な手段は使わないんじゃないかと思います。
不動産
車とは逆に、差し押さえの話題が多いのが不動産です。
保証協会は、不動産の差し押さえにはかなり積極的な印象です。
債務者の不動産を把握するのは、不動産の場所によっては簡単です。
不動産オーナーの方ならご存知のとおり、不動産には登記簿というものがあります。
あの登記簿ですが、実は誰でも閲覧できるのです。
法務局へ行けばもちろん見られますし、インターネットでも見られます。
あなたが法定相続人であっても、保証協会から郵送での連絡を受けているということは、住所は知られているということです。
今住んでいる家が持ち家なら、この方法ですぐに知られてしまいます。
情報探しのコツ
債務者の資産はどうやって調査されるのかを知りたい時、どうしても自分の立場で、つまり債務者の立場で調べようとしてしまいます。
私もそうしていました。
でも、ある時思いついて「自分が債権者だ」と思って調べ始めると、するすると情報が集められました。
「債務者の資産の調べ方」ではなく「債権回収の方法」を調べるほうがよく分かります。
夜も眠れず検索しまくった経験から知るエッセンスとしてお伝えしておきます。