「スプリット」シャマラン三部作の真ん中-あらすじと感想-障害の別な見方

2019年6月13日

M・ナイト・シャマランの「スプリット

アンブレイカブル」の16年後に公開された「スプリット」は、アンブレイカブルと世界を共有しています。

「スプリット」に続くシャマラン映画「ミスター・ガラス」と合わせて三部作になります。

スプリットの登場人物とキャスト

拉致される女の子3人

ケイシー

演: アニャ・テイラー=ジョイ

子供時代:イジー・コッフィ

拉致される女の子

学校で孤立しているが、ケイシーのほうが周囲と距離を置くのを望んでいるように見える。

クレア

演:ヘイリー・ルー・リチャードソン

ケイシーの同級生でバースティパーティーにケイシーを招待する。白人金髪の子。

マルシア

演:ジェシカ・スーラ

ケイシー、クレアの同級生。ラテン系っぽい黒髪の子。

精神分析医

フレッチャー

演:ベティ・バックリー

ケビンを診ている医師。

昔ながらの精神分析をメインにしていて投薬などはしていない模様。

ケビン

演:ジェームズ・マカヴォイ

ケビンは解離性同一性障害(=DID,多重人格)の患者で23の人格が確認されている。

担当医師フレッチャーは、最近新人格が生まれたのではないかと疑っている。

ケヴィン・ウェンデル・クラム

基本人格

デニス

リーダー的な人格

強迫性障害で裸の女の子の踊りを見たがる

バリー

働いている人格

パトリシア

女性

拉致された3人に食事をふるまうなど親切だが、あまり権限を持っていないふう

ヘドウィグ

9歳の少年

ビースト

新たに誕生したらしい人格

垂直な壁を上る身体能力と弾丸をも弾き返す鋼の肉体を持つ。

スプリットのあらすじ-ネタバレなし

さらわれる3人の少女ケイシー、クレア、マルシア

クレアが特に親しくもないケイシーをパーティに呼んだのは、クラスで一人だけ呼ばないのでは気の毒だから。

クレアはお情けで招待し、ケイシーはお義理で参加したという状態です。

パーティの帰り、ケイシーとクレア、マルシアの3人は男にさらわれ、気が付くと知らない部屋に監禁されていました。

多重人格の拉致犯

施錠されたドアの向こうから女性の声がします。

この家を訪ねてきた人なのか、同居しているのか。

女性は、3人の拉致に怒っているようで、男と口論しています。

クレアの叫び声を聞いた彼女は、3人の閉じ込められた部屋の扉を開けました。

でも少女たちは茫然としたまま何も言えません。

そこに立っていたのは、女装した拉致犯の男だったのです。

拉致犯は、女性になるだけでなく、過剰に几帳面になったり、9歳の少年になったりと頻繁にキャラクターが入れ替わり、解離性同一性障害(DID)と目されます。

セラピストのフレッチャーは、ここ最近の彼の言動から、今まで存在しなかった凶暴で危険な人格が生まれた可能性を疑っているようです。

脱出の試み

3人の少女たちは、脱出の道を探ります。

クレアは、天井に隠された通路を発見しますが、行き止まり地点で男に見つかり、そこから動けなくなりました。

女性の人格が出ている時を狙って逃げ出そうとしたマルシアも、屋外へは出られず、別の部屋に押し込まれてしまいました。

子供の頃に父と叔父に教えられた狩りの心得を思い出すケイシーは、9歳の少年の人格ヘドウィグの懐柔を試み、自分の秘密を教えます。

「学校でわざと騒ぎを起こしている」「居残りをさせられればみんなと離れて一人になれるから」

医師フレッチャーの危惧する新人格は本当に存在するのか、男の住まいはなぜ奇妙な構造なのか、3人は生きてここから出られるのか…を追う映画です。

スプリットの感想

望みと違うことをしてしまうケビン

とても悲しい映画。

誘拐や殺人はケビンの本当にしたいことではないのに、なぜこうなってしまうのでしょう。

ケビンの中のどの人格もこんなことは望んでいないはずです。

「無価値な若者」を死なせても、ケビンの心が鎮まることはありません。

虐待されて育ったケビンが本心で必要としているのは、愛です。

担当医フレッチャーは、ケビンの中のすべての人格に敬意を持って接している得難い理解者でしたが、どれほどの人でも親の代役にはなれず、ケビンの愛への渇望は満たされないまま何をしたら自分が救われるのか分からなくなっていたのでしょう。

ケイシーはDIDだったのか

私はそう感じましたが…

解離かいり性同一性障害(Dissociative Identity Disorder,DID)昔は多重人格と呼ばれた障害は、多くのケースで幼少期に虐待を受けたことが原因している、と私は認識しています。

幼年期から性的虐待を受けていて、父親が亡くなってからは虐待者である叔父に育てられたケイシーがDIDでも不思議ではありません。

学校で孤立し、ひとりでいるのを好んでいたのは、人格が交代するのを知られたくなかったからかもしれませんし、監禁された部屋でいち早くケビンの状態を理解し、ヘドウィグに話しかける様子からも、複数の人格を持つ者の性質を把握していたように見えます。

最後に婦人警官を睨みつける顔は、まるで別人のよう。

ケイシーは、元々解離性同一性障害だったか、檻でのケビンとのやりとりがきっかけで別人格が誕生したかのどちらかだと思います。

※現実の世界では、多重人格については今も確定的でない要素が多いようです。虐待との関係もはっきりしているわけではありません。

精神障害を能力と捉える医師フレッチャー

フレッチャー医師には、一部の精神疾患を一種の超能力と捉えている様子がうかがわれます。

映画のラストで、昔ニュースになったイカレた犯罪者「ミスターガラス」が話題に上ります。

※逮捕された犯人についたあだ名が思い出せない女の人に、横から「Mr.ガラス」と教えるのが「アンブレイカブル」の主人公ダン(ブルース・ウィリス)です。

ミスターガラスは、シャマランの過去作「アンブレイカブル」の登場人物で、「スプリット」の次に制作された「ミスターガラス」で三部作は完成します。

ミスターガラスことイライジャも、特異体質を才能と解釈しているところがありました。

しかし現代の科学ではその信念自体が精神疾患であり、これが本三部作のテーマになります。

ミスターガラスの予告動画↓

解離性同一障害と才能

解離性同一性障害では、ビリー・ミリガンが有名です。ビリーの持つ人格には、それぞれ異なる才能がありました。

絵がうまかったことは良く知られていますが、人格によって絵のタッチが違います。

ある人格は人間離れした力を出すことができ、床に固定されたトイレを素手で剥がして投げたそうです。

バイクで橋の欄干を走ったことも。

またドラムの名手だった人格を他の人格と統合すると、演奏のクオリティが歴然と低下したと言います。

人格がバラバラになった時、個性がシャープに表出され、その人の持つ才能が最も高いパフォーマンスを発揮する?

最近は、なんちゃら障害、かんちゃら障害と無限に病名が増えて、これじゃ「天才」も障害の別な言い方じゃないかと思うことすらあります。

障害は必ずしも「困る問題」ではないのでは?

障害や疾患を欠陥と考えず、そうした特性を肯定的に見ることがあってもいいように思います。

広範性発達障害と診断されながら数学など特定の分野で超人的な才能を持つ人がIT企業に厚待遇で迎えられることは、もう起きています。

その発想の適応範囲を拡大する方法を考え…て下さい誰か。