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映画「湿地」(アイスランド2006)のあらすじ登場人物相関図感想など

2019年5月23日

湿地」は、アイスランドの映画で、アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの同名小説が原作です。

静かに進行する映画で地味ですが適度な渋みで見やすい作品でした。

「湿地」の登場人物とあらすじなどをまとめます。

「湿地」の登場人物と相関図

登場人物相関図ネタバレなし版

各登場人物の設定段階での相関図です。

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映画湿地登場人物相関図

ネタバレ版の登場人物相関図は一番下にあります。

警察関係者とその家族

エーレンデュル

演:Ingvar Sigurdsson

ベテラン刑事

エーレンデュル役のイングヴァール・シーグルソンが準主役くらいの役(落ち目の悪党の役)で出ている映画「ディールブレイク」もアマゾンプライムで見られるようになりました。

ディールブレイクには娘エヴァ役のオーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティルも出ています。こちらは刑事役。面白いですよ。

エヴァ

演:Ágústa Eva Erlendsdóttir

エーレンデュルの娘

住む家もなく放蕩し、中絶代を父にせびる。

エリンボルク

演:Ólafía Hrönn Jónsdóttir

ベテラン女性刑事

シグルデュル

演:Björn Hlynur Haraldsson

アメリカ経験のある若手の刑事

湿地帯の人々

オルン

演:Atli Rafn Sigurðsson

遺伝性疾患の研究員

コーラ

演:Rafnhildur Rósa Atladóttir

オルンの娘

神経線維腫症で5歳で死ぬ

ホルベルク

演:Þorsteinn Gunnarsson

トラック運転手(1937年生)

沼地の上に建つ家で死体で発見される

一人住まいで身寄りはない(妹は6歳の時に死亡)

ウイドル(故人)

ホルベルクの隠し持っていた写真は、ウイドルという少女(享年4歳)の墓標を撮ったもの

母親はコルブルン。父親は不明

死んだのは1974年

コルブルン(故人)

ウイドルのシングルマザー

自殺している

エーリン

演:Þórunn Magnea Magnúsdóttir

コルブルンの姉

海の近くに暮らす老婆。家の前にウイドルのお墓がある

ルーナル

演:Eyvindur Erlendsson

元巡査部長の爺さん

エーリンはルーナルを下品な野郎と悪し様に言っている

グレータル

ホルベルクとつるんでいた男

写真が趣味だったらしい

70年代の初めに失踪したまま今も行方不明

エットリデ

演:Theodór Júlíusson

ホルベルク、グレータルとつるんでいた男

今は服役中(何をして捕まったのかは不明)

アイスランド人の名前

どの名前も男の人は「~~son」女の人は「~~dóttir」で終わっています

アイスランドには姓というものがなく、男の人は名前+父親の息子、女の人は名前+父親の娘でワンセットの名前になります。

たとえば、太郎さんの娘の花子さんなら、Hanako Tarodóttir(ハナコ・タロウドッティル)太郎の娘花子 という名前になるってことです。

私もさっき知ったんですけどね(笑)

詳細:アイスランド人の名前|Wikipedia

映画に出て来るウイドルの墓標は「Audour Kolbrunadottir」と彫られていて、このお墓にいるのがウイドルでコルブルンという母の娘なんだなと分かるのですが、氏名を刻んでいるだけで、特段にウイドルという人物を説明するために書いた言葉ではないのですね。

最初は、なんとなく変な墓標だなーと思ったんですよね。

「湿地」のあらすじネタバレなし版

湿地に建つ家で頭から血を流して死んでいるホルベルクが発見されました。

ホルベルクは初老の独身男で、妹がいましたが6歳で死んでいます。

机の引き出しの裏に一枚の写真が貼られていました。

写真は墓を撮ったもので、墓標は「コルブルンの娘ウイドル 4歳で死す」

ウイドルの母コルブルンは自殺していて、父親は届けがなく不明です。

エーレンデュル刑事がウイドルの伯母エーリンに話を聞きに行くと、エーリンはホルベルクへの憎しみを露わにし「ホルベルクが何をしたか、退職した警官のルーナルに聞け」と言います。

ルーナルは、現役時代、ホルベルクがコルブルンをレイプした事件を闇に葬っていました。

 

アイスランド遺伝子研究社のオルンは、小児病棟へ向かいます。

5歳の娘コーラ神経線維腫症で入院しているのです。

自分の娘がその難病にかかったことがオルンには不思議でなりません。

脳腫瘍のひとつですが、神経線維腫症は遺伝性のものです。

たいてい子供のうちに発症し、長くは生きらない病気です。

「湿地」のあらすじネタバレ版

「湿地」をラストまで詳細にネタバレしています。

読みたい人はタップして開いてください。

ネタバレを読む

湿地の家の死体

空き家のように見える荒れた家の床に初老の男の死体が転がっています。

男はトラック運転手のホルベルク

妹がいましたが6歳で死んでいて、他に存命の肉親はいないようです。

死後2日程度と見られますが、臭気が強く、もっと古いように感じられます。

この悪臭は、以前から苦情の出ている問題でした。

その家は湿地にあり、床が腐りかけているのでしょう。

享年4歳ウイドルの墓

家を捜索すると、机の引き出しの下に貼り付けた封筒が発見されます。

中には墓標を撮った写真が一枚。

1974年コルブルンの娘ウイドル 4歳」とあります。

ウイドルについて調べると確かにコルブルンという女性の娘ですが、父親の届けがありません。

調査した職員は、「父親の名を伏せるのは、近親相姦やレイプでできた子のことが多い」と言っています。

そのコルブルンは自殺しています。

エーレンデュル刑事はコルブルンの姉エーリンに話を聞きに行きますが、警察を嫌っているようでとても協力的とは言えません。

ホルベルクの名前が出ると「死ねばいい」と吐き捨て、「何があったのだ」と聞くと、「下衆のルーナルに聞くといい」と答えました。

ルーナルは、退職した元巡査部長です。

食い違うルーナルとエーリンの話

コルブルンは、ホルベルクをレイプで訴えると言ったが、本当はコルブルンが誘ったのだ」

「だから、告訴などしたら笑いものになると教えてやった」

ルーナルは、そう言います。

でもエーリンの話は違いました。

ルーナルは、唯一の証拠品だった血の付いた下着を隠した

そして

「ホルベルクは、できた子供を認知せず、仲間のグレータルエットリデにコルブルンが米軍基地で売春していたと偽証させた」

とも。

ホルベルクとグレータル、エットリデ

グレータルは、70年代に失踪したまま今も見つかっていません。

エットリデは、現在別の事件で服役中です。

ただ、ホルベルクが死んだと見られる日には一時帰宅の許可を得て外にいました

別のレイプ事件の話をするエットリデ

エットリデをホルベルク殺しの容疑者と考えるエーレンデュル刑事とシグルデュル刑事は、刑務所に面会に行きます。

エットリデは、「コルブルンなど知らない」と言って、違う女性の話を始めます。

「グレータルがグリンダヴィクに住む女とホルベルクの写真を撮った」

ホルベルクらのグループによるレイプ被害を受けた女性がコルブルンの他にもいたと言っているように聞こえます。

続いてグレータルの行方を尋ねると「ルーナルに聞け」と言ったきり口をつぐんでしまいました。

オルンの娘コーラの死

オルン、そろそろ帰ってくれないか」

守衛が声を掛けに来ました。

終業時間はとうに過ぎています。

ようやく職場を出たオルンが向かったのは小児病棟でした。

入院している娘のコーラは、まだ5歳くらいでしょうか。

目の周囲は黒ずみ、頬に色素斑ができています。

闘病もむなしく、この少女は間もなく亡くなります。

脳腫瘍の家系

コーラは脳腫瘍でした。

遺伝性疾患の研究を仕事にしているオルンは、コーラの脳の腫瘍が遺伝と関係しているのか確かめようとしています。

オルンの父親は、「一族でこんな病気にかかった者はいない」と言い、母親は、この話題を避けたい様子です。

妻は「調べてもコーラは帰ってこない」と興味を持ちません。

ある日オルンは、脳腫瘍患者のリストにホルベルクの名前を発見します。

30年前のレイプ捜査

エットリデの証言から、警察は、ホルベルクにレイプされた女性を探さなければならなくなりました。

30年前にグリンダヴィクに住んでいたホルベルクと同年代の女性のリストは166人。

ひとりひとりに尋ねて回るほかなく、シグルデュルはうんざりしています。

見かねた女性刑事エリンボルクがシグルデュルと交代。

女性刑事なら反応も違います。家にあげてお茶を入れてくれる夫人もいました。

オルンの母親です。

壁に飾られた写真は、若い頃の彼女だそう。美人です。

オルンの母は、刑事がホルベルクからレイプされた被害者を探していると知るととたんに表情を硬くし「お役に立てることは何もない」と言って会話を終わらせました。

一方エーレンデュルは、グレータルの失踪を捜査していたのもルーナルだったことを知ります。

脳のない遺体

ホルベルクの遺体は解剖され、脳に腫瘍があったことが確認されました。

ホルベルクの妹は、子供の頃に脳腫瘍で死んでいます。

コルブルンの娘ウイドルが4歳で亡くなったのも、レイプ犯ホルベルクから遺伝した脳腫瘍のためかもしれません。

ウイドルの墓が掘り起こされます。

ところが、その遺体には脳がありませんでした。

頭蓋骨の中は空っぽです。

何者かが脳を持ち去ったとしか考えられません。

瓶の町にあるだろう」と解剖医が言います。

瓶の町とは研究所のある場所のことで、脳をホルマリン漬けにして保管するとしたらそこの研究員でしょう。

臓器管理者オルン

瓶の町でエーレンデュルに応対する臓器管理の担当者は、オルンです。

オルンによると、ウイドルの検死報告書に記載された「脳腫瘍」という言葉は不十分で、正確には「神経線維腫症」という遺伝性の疾患なのだそうです。

幼いうちに色素斑や皮膚腫瘍などの症状が発現するのが普通ですが、まれに無症状のまま生活できる保因者もいます

そう語るオルンの顔を見つめるエーレンデュルは、ウイドルの脳を持って行ったのは彼だと確信しています。

オルンは隠しだてするふうもなく、ウイドルの脳をエーレンデュルに渡しました。

実はオルンは、数日前にホルベルクの家に忍び込んでいます。

今のオルンには娘に神経線維腫症の因子があった理由を追求することがすべて。

他のことは目に入っていません。

湿地の家の床下

ホルベルクの遺体が発見されたときから、家の床は一部がめくれあがっていました。

悪臭の発生源もその下にあるようです。

床板をはがし、コンクリートを砕くと、ますます臭気が強くなります。

そこにカメラを抱いたグレータルが埋まっていました。

フィルムには女の人の裸体が映っています。

捜していた30年前のレイプ被害者、コルブルンではない別の被害者の写真でしょう。

エリンボルクは、その顔に見覚えがあります。

先日、30年前のレイプの件で訪ねた家に飾られた写真の顔。

オルンの母の若い時の顔でした。

エットリデとルーナル

エットリデは脱獄を果たし、ルーナルの家にいます。

「なぜグレータルを俺たちに歯向かわせたのだ」

ルーナルは、返事をしません。

俺たちがグレータルを殺した時には関与がバレないかと肝を冷やしただろう」

ルーナルは、相変わらず黙ったまま。

エットリデは、立ち上がるとルーナルの顔にクッションを押し付けて殺そうとします。

窓の外から監視していたシグルデュル刑事が要請した応援部隊が駆け付け、エットリデは牢に逆戻りとなりました。

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ホルベルクらとルーナルの犯罪

コルブルンの事件をもみ消したルーナルは、ホルベルク、エットルデ、グレータルの3人を手下のように扱うようになり、ゆすりの仕事をさせていました。

オルンの両親もゆすりの被害者です。

材料に使われたのは、グレータルの隠し撮りしたホルベルクと母親との情事の写真。

グレータルは次第に増長し、ホルベルクとエットルデの恨みを買って殺されます。

首尾よくグレータル失踪の担当になったルーナルが、早々と捜査を切り上げ、ホルベルクらのレイプと殺人は、ルーナルの関与ともども闇に葬られたのでした。

オルンの探し当てた真相

オルンには妹がいました。

やはり子供の頃に死んでいます。

そして今度は娘のコーラが。

家系にはないはずの遺伝性疾患がなぜ子供たちに襲い掛かったのか。

家族の歴史のどこかで、違う男の遺伝子が紛れ込んだ可能性を疑わずにいられません。

そして入手した保因者のリストにはホルベルクの名が。

無症状の保因者ホルベルクが妹の父親だったのでしょう。

でも、オルンの娘も同じ病気で死にました。

オルンもまた自覚のない保因者だった、つまり母親とホルベルクは一度きりの関係ではなかったということです。

父は猟師で不在のことが多く寂しかったのだと、母は告白しました。

この残酷な真相を胸に、オルンはホルベルクの家に押し入り、「あんたは負の遺産を背負って死んでいくべきだった」と言います。

揉み合いになるとオルンは、近くにあった灰皿を取り、ホルベルクの頭を割って殺したのでした。

棺へ帰るウイドル

オルンが、ウイドルの墓の前に立っています。

警察の遺体安置所からウイドルの遺体が盗まれたと連絡を受けたエーレンデュルが駆け付け、預かっていたウイドルの脳をオルンに差し出しました。

エーレンデュルに猟銃を向けるオルンでしたが、その脳を受け取ると静かに棺の端に収めます。

パトカーのサイレンが近づいて来ます。

止める間もなくオルンは自分の胸を撃ってしまいます

エーレンデュルは転がっていたシャベルを拾い上げ、捜査のために掘り返したウイドルの棺に土をかけはじめました。

「湿地」の感想など

オルンがホルベルクに、子供を作るべきではなかったという意味合いのことを言ったとき「さりげなく問題作!?」と思いました。

遺伝性の病のある家系は絶やすべきであると言っているように聞こえるので。

オルンが神経線維腫症の因子を持って生まれたのは、母が不貞を働いていたからです。

だからこそオルンは、自分がその因子を受け継いでいることを知らずに子を設け、その子供が夭逝することになりました。

もしもオルンが夫婦の間の子であれば、少なくとも脳腫瘍の多い家系であることは自覚できますし、研究が進んで神経線維腫症が遺伝性であると分かった現代なら、子供を作らない人生を選ぶこともできました。オルンならきっとそうしたでしょう。

ホルベルクのしたことは、夭逝する可能性のある病の因子をよその家系に忍び込ませることです。

その無分別が、コーラに「目はものを見るためにあるんじゃない。泣くためにある」と言わせたのです。

コーラだけでなく、オルンの妹もコルブルンの娘ウイドルも、まるで闘病するために生まれてきたような一生でした。

オルンが激しい怒りを燃やしているのは、ホルベルクのその無責任なふるまいに対してだということは分かります。

でもあの場面で言っているのは、もっと根本的に ―婚姻があろうとなかろうと、強姦だろうと和姦だろうと― 重病の遺伝子という「負の遺産」を持つ人間は、子を設けるべきではないという意味に取れます。

「俺ならそうした」とオルンは思っているでしょうし、私がその立場でも子供は作らないと思います。

でも他者に要求していいことなのかどうか…

ここから先は、レイプや不倫という要素を除いて考えなければならないことです。

元々子を作ることは、体質や能力、容姿まで、望ましいとは言えない遺伝子を含めて子に受け継がせることです。

子を作っていい者と作るべきでない者、このボーダーラインをどこに引くのか、誰が引くのか。

…もちろん私には分かりません。

……とにかくそんな感じで、さりげなく問題作じゃない?と思ったわけです。

「俺とあんたが最後の保因者だ」と言うオルンは、自分とホルベルクでこれ以上の遺伝を食い止められると考えているように見えます。

最後の保因者って、それはオルンの知っている中での最後のふたりであって、他にも大勢いるからふたりが死んでもさ…とも考えたり。

あまり科学者らしい発想に感じられず、オルンの思考は恨みで曇っているということかな?と思いました。

でもWikipediaでアイスランドの人口を見たら、オルンの言うことも分かりました。

アイスランドの人口は355,620人。

日本で一番人口の少ない鳥取県で57万人万人なので、全国で35万人のアイスランドは、かなり人口の少ない国です。

その上アイスランドは島国です。

35万人だけの閉じた社会なら、オルンとホルベルクが本当に「最後の保因者」かもしれませんし、発病した子供たちがみんな死んだ今では、ふたりがこれ以上子供を作らなければ、根絶できる可能性も高いでしょう。

また、人口の限られた島の中では、ひとりひとりの社会への寄与度が高く、より責任ある行動が求められるように思います。

そうした土地柄あってのこととすれば、オルンの言動にも納得がいきます。

「湿地」というタイトルは、冒頭近くにある「湿地に建つ家だから床下が臭うのだ」という台詞と同様「こういう土地だからこういうことが起きるのだ」という意味を込めてつけられたものなのかもしれません。

(原題は「Mýrin」で、英訳すると「moor」と出ます。moorは、イングランドやスコットランドの水はけの悪い土地のことです)

映画「湿地」の登場人物相関図ネタバレ版

明らかになった真相ベースの登場人物相関図はこうなりました。

タップで拡大してください。

映画湿地登場人物相関図真相版

 

同じくアイスランドの映画「ザ・ディープ」がAmazonプライム会員さんなら無料で見られます。

アイスランドに興味を持たれた方はぜひ。

ザ・ディープの登場人物やあらすじなどはこちらに