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【10年以上前の相続債務】時効援用すると相続放棄ができなくなることも

2018/02/21

※債務を相続した場合の話です。

ある日突然届く身に覚えのない債務の通知。

たとえば信用保証協会(あるいはそのサービサー)からの通知ならこんな内容でしょう。

亡誰それ様は、うちで代位弁済した債務の連帯保証人です。
求償金と損害金はここまで増えてます。
あなたはその法廷相続人なので、今後のご返済の相談を…

「寝耳に水」ですよね。

相続人だと言われても、そんな債務の存在すら知らずにいた人も多いと思います。

いつのことだろうと、よくよく書面を見ると「代位弁済日」は15年前や20年前だったり…

それでいくらなんだろうと確認すると数千万や場合によっては億単位だったり…

何これ?

と、なり…

ひとまずネットで検索してみる人が多いんじゃないでしょうか。

すると…

同じような状況を不特定多数に相談している過去ログが見つかるかもしれません。

そこには

  • 借金には時効がある(5年または10年)。
  • 借金の時効は、債務者が援用してはじめて有効になるもので、こちらが時効援用の手続きをしないうちは、債権者の請求権は残っている。
  • 援用するまでは請求してくるが、内容証明等で時効の援用を宣言すれば取り立てはなくなる。

と言ったようなアドバイスが書かれていることがよくあります。

なんだそれだけでいいのね。と安心して、早速時効援用の内容証明を…とやりがちと思いますが、

が!

ちょっと待って下さい。

その時効援用が命取りになるかもしれません。

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信用保証協会は時効を完成させるようなミスはしない

相続した債務の時効

保証協会から「15年前の債務を相続している」と通知が…

私自身が上述のような通知を受け取ったことがあり、その体験からお話します。

債権者が信用保証協会のケースです。

父が他界して2年以上たつ頃保証協会からそんな通知が届きましたが、父が連帯保証人になっていたことすら知らなかった私は、心底びっくり。

ネットで検索すると債務には消滅時効なるものがあると…

保証協会からの通知にある代位弁済日は、15年前の日付だったので「とっくに時効じゃん!」とすっかり安心した私。

きっと姉のところへも同じ通知が届いているだろうから時効援用すればいいんだと教えてあげようと、電話をかけました。

でも慎重派の姉は、「なんとなく心配だから弁護士さん探して相談してみる。あんたもまだ何もするな」との返答。

相変わらず心配性だなーと思いはしましたが、昔の借金なだけに損害金がかさんで求償金と合わせると9000万くらいに膨れ上がっています。

万が一ってことがあるから、きちんと専門家に聞いてみたほうがベターな金額ではあるわね…と、姉に任せることに。

とは言ってもこの時はまだ「こんな理不尽なことがまかり通るはずがない」と、随分簡単に考えていたのです。

時効援用に失敗すると相続放棄ができなくなることも

一週間ほどたって姉から電話がありました。

姉が言うには

「時効の援用を申し出て、もしもその債務が消滅時効に到達していなかったら相続放棄ができなくなるから今はやらないほうがいいって」

時効を援用する=債務の相続を認めた と解釈されるので、時効援用後の相続放棄はできないのだと言うのです。

この件では、法の専門家の間でも違う見解(時効を援用することが、相続を認めたことになるとは限らないという見解)もあるようです。

でも、時効の援用を持って債務を含めて相続を承認したものとみなされた判例も存在します。

危険なことは間違いないです。

まじですか!でもさ…”消滅時効に到達していなかったら”でしょ?

「こんな昔の借金は間違いなく時効だから大丈夫じゃない?」

と聞いてみると

「たぶん時効は完成していない。保証協会が時効を成立させることは、まずあり得ないという話だった」

と…

「調べてみなければ確かなことは言えませんが、今この通知を送って寄こしたということは、まだ時効は完成していないでしょう」というのが弁護士さんの見解だったと、姉は言うのでした。

でも15年前なのになんで?

時効の起算日は代位弁済日。でも破産手続き終結までは中断されている

さらに詳しく聞くと、会社が倒産した場合の代位弁済では、代位弁済日が時効の起算日となるものの、その後保証協会が破産手続きに参加するとそこから破産手続き終結の日まで時効が中断されるそうなのです。

「破産手続きに参加」=「破産裁判所に代位弁済の事実を申し出て、債権者の地位を引きついだことを明確にした」ということです。

その「破産手続き終結」までには、数年かかることも珍しくなく、長ければ10年かかるケースもあるのだと。

非常に多くのWebページで、「保証協会に代位弁済された債務時効の起算日は、代位弁済日である」と説明されています。

これは間違ってはいません。正しいです。

起算日は代位弁済の日です。

ですが、破産手続きのために長い中断が挟まれることがままあり、代位弁済日の5年後あるいは10年後が時効成立の日であると単純に決めてかかるとマズイです。

代位弁済日の日付だけでは時効の日がいつなのは分からないということです。

また、連帯保証人が複数いたケースでは、そのうちの誰かが一部でも返済しているために最後の返済の日が時効の起算日にリセットされているかも知れません。

ますます

代位弁済日の日付だけでは時効の日がいつなのは分からないということです。

※後に官報で調べたところ、父が連帯保証人になっていた会社の破産手続き終結は、私たちに通知が届いた9年8ヶ月前でした。

保証協会の代位弁済先は信用金庫だったので時効までは10年必要だったはずで、まだ時効は完成していませんでした。(危なかった!)

(これだけが時効完成に至らなかった理由ではなく他の何かもあったのかもしれませんが、私たちにはここまでしか分かりませんでした)

時効が近づいていたので相続人を探して連絡してきたのかな?と推測しています。(これはあくまで推測です)

債務者の側からは見えにくい時効ですが…

もっとも、保証協会の債務については、時効の起算日がいつなのか、時効の完成は何年何月なのかと追求してもあまり意味がありません。

とにかく信用保証協会が時効をみすみす成立させることは、ほぼあり得ず、時効が近くなれば、連帯保証人(か、その相続人)を相手に訴訟を起こすなどの措置を講じて、いつまででも時効を延長し続けるものなのだそうなので。

そうです。つまり

事実上、信用保証協会の債務に時効はない

ということです。

信用保証協会の債務に時効はないと心得よ

相続債務の時効援用は慎重に

ネットでよく見る「債権者は、時効となる日付を過ぎても返済を督促してくることがあるので、債務者側から時効援用手続きを取って債務を消滅させましょう」という話も嘘ではないです。

消費者金融などだと、こうしたことがよくあるらしいです。

「こうしたこと」と言うのは、「時効完成の日は過ぎているけれども、債務者がまだ時効を援用していない場合は債権が有効なので、とりあえず請求する」ことです。

それで返済されれば儲けもんですし、時効援用されれば債務は取りっぱぐれになるものの事務処理はそれで済むと、こういうスタンスでの返済要求であれば、時効の援用で終りに出来ます。

また、債権者が誰であっても(信用保証協会でも)、時効を援用する人が借金をした本人や連帯保証人としてサインした本人であれば、たとえ時効の援用に失敗しても、相続放棄が出来なくなるという件は関係ないので、ダメもとで時効を宣言してみるのもひとつの手段ではあるでしょう。

ネットにある「時効援用のススメ」は、主に借金した人自身、保証人になった人自身向けの話で、親の借金などの相続人さんは安易に援用すると危険なのです。

さらにこれが保証協会の場合、時効の完成前に延長のための策を打ってくるのが普通なので、「時効の日を過ぎる」ということ自体がほとんどありません。

よって、時効を過ぎた債権をしれっと回収に来ることもあまり考えられません。

保証協会が相続債務を通知してくる≠まだ債務が生きている」だと思ってください。

うかつに時効援用の内容証明なんか送ったら…

現実にまだ時効が成立していないので当然その援用は却下され、相続放棄も出来なくなってしまうかもしれません。

時効前の債務を相続放棄出来ないということは、求償金とその損害金をあなたが支払うということです。

時効援用の紙切れ一枚で、何百万何千万の借金を抱えることになってしまう可能性もあるのです。

信用保証協会には相続放棄で

では、どうしたらいいのか?

おおいにビビりながら姉に尋ねました。

姉の答は「相続放棄がいいって」でした。

でも…

私もそれまでに少し調べたので知っていました。
発生から3ヶ月以上が経過した相続は、たとえ何も相続していなかったとしても放棄できないということを。

債務は9千万です。姉とふたりで折半しても一人4500万…

やばくない?ねえ私ら今すごくやばくない?人生最大のピンチじゃない?

と頭の中では考えているのですが、怖くてそれを口に出せずにいる私の心情を見抜いたように姉は、

3ヶ月たっていても相続放棄は出来る

おごそかにそう言ったのでした。

相続放棄に当たって実際に体験した流れについては次に書きます。

ここでお伝えしたのは

  • 相続した借金の時効援用に失敗すると相続放棄もできなくなることがある
  • 保証協会の時効起算日は代位弁済日であるものの、破産手続きが挟まれれば大幅に先延ばしされる上に、保証協会は必ず時効を延長させる手立てを打つので事実上時効はない

という二つの事実ですが、本質的な問題はそこではなく

ネット上にある情報は、それ自体が間違っていなくても、素人である私たちが集めた情報の断片をつなぎ合わせた知識では、重大な要素が欠けている可能性があり、それによって運命が変わってしまうかもしれないということです。

逆に相続放棄が難しそうな状況にあって、時効に賭けるしかないと思っている場合でも、相続放棄できないというのが、断片情報による思い込みかも知れません。

生兵法は怪我のもとと言います。

すぐに法律の専門家にあなたの家のケースを具体的に話して、ベストな解決法を相談してください。

具体的」に話して対策を聞いてみるまでは、何もしてはいけません。

相談は1軒で済ませず、数箇所あたってみることをおすすめします。

 

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