「ザ・テラー」 S1を見た人におすすめの本,アグルカの噂,極地探検,イヌイットetc

ドラマ「ザ・テラー」からフランクリン遭難事件に関心を持った人は多いと思います。

私もそうでした。

なぜかあの惨事と北極に強くひきつけられて、ドラマを見た後であれこれ調べました。

作品の世界から抜け出してしまうのがもったいないような気持ちになって周辺情報を探した感じです。

同じ心境の人用におすすめ本を書いておきます。

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ザ・テラー極北の恐怖

原作はダン・シモンズの小説です。

小説を読んで初めて物語のテーマが分かりました。

小説では、全世界から高級な資材を集めて建造したエレバスやテラーよりもイヌイットがそこにあるものだけで建てる氷の家のほうが暖かくて快適だと語られ、「足りる」ということを知らない私たちの社会に疑問を投げかけているのです。

私たちの暮らす世界は「増やし続けなければ。勝ち続けなければ」という強迫に満ちています。

そこにあるもの、今あるもの。

これだけでいいはずなのに、「もっともっと」と周囲に手を伸ばし、得続けなければ失ったような気持ちになってしまいます。

まるで何かを齧っていなければ前歯が伸びて始末に負えなくなるネズミのよう…。

まったく違った価値観で生きるレディ・サイレンスイヌイットが、フランシスの心のチャンネルを変える。

これが原作「ザ・テラー極北の恐怖」です。

ドラマではこのテーマを意図的に排除していると思います。

作品としてのまとまりの良さはドラマの方がいいくらいです。

ダン・シモンズの主題を入れるとどうしてももう少し長く垢抜けない雰囲気になってしまうので、人間ドラマという作りにしたのかなと。

ただ、シモンズの伝えたいことを知るには原作でないとダメです。

ほぼ同じストーリーでありながら本質的には別モノであるところが面白いなと思いました。

(結末はかなり違います)

今ではもう電子書籍しか手に入らない状態ですが、ぜひ読んで欲しい本です。

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アグルーカの行方

探検家の荻田泰永氏とライター角幡唯介氏がフランクリン遠征と同じコースを歩くドキュメンタリーです。

日本で一般に読める物の中ではこの本が一番詳細にフランクリン遠征を解説していると思います。

タイトルの「アグルーカの行方」とは、ちょうど遭難の時期にイヌイットに助けられた白人男性がいて、その人は「アグルーカ」と呼ばれていたという噂から来ています。

ザ・テラーのフランシスはあの遠征の前にも北極へ行ったことがあり、以前の遠征ではイヌイットたちから「アグルーカ」と呼ばれていました。

ドラマでもフランシスはレディ・サイレンスにそう自己紹介しています。

フランシスは生きていた?

心ときめく噂です。

アグルカは飢えてひどく疲弊していましたが、数か月イヌイットと暮らして回復し、国へ帰るために南へと旅立った…と言われています。

アグルカのほかにもう一人の白人がいて、アグルカは彼をドクトゥク(医者)と呼んでいたという話も。

イヌイットの伝承は本当なのか、本当だとしてアグルカはフランシスなのか別人なのか。

「アグルーカの行方」には、イヌイットの証言が集められています。

他に大遠征隊が日々必要とする栄養量とエレバスとテラーに積まれた食品の総カロリーなども出ていて、とても面白いです。

キングウィリアム島の地理や気候もこの本を読んで把握できました。

今回上げた本の中で一番のおすすめはこれです。

(2番目は原作、3番目はアラスカ物語

緩慢の発見

少年時代からフランクリンを好きで好きで、フランクリンについて一心に調べたというドイツの作家シュテン・ナルドニーの小説です。

フランクリンはすべてにおいて緩慢な子供だったという設定で、なんというか…ちょっと発達に問題がある子供のようにすら見えるのですが、成長するにつれそのゆっくりなペースが深い洞察という実を結び、人を魅了する人物になっていきます。

本当のフランクリンはここまで緩慢ではなかったでしょうし、キャラ付けは作者のしたものですが、戦争タスマニア統治極地遠征などは、事実に沿っています。

タスマニア統治についてはこちらに
2 ジョン・フランクリン

フィッツジェームズソフィアに恋していることになっていたり、ソフィアとジェーンの間に同性愛的な感情があったと匂わせる箇所があったりと、登場人物の内面については、大幅な創作が加えられています)

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世界最悪の旅

上にあげた「アグルーカの行方」の中で何度も取り上げられるので読んでみることにした本です。

極地遭難を扱ったドキュメンタリーを代表する一冊でしょう。

100年ほど前、世界初の南極点到達を目指したイギリスのスコットでしたが、たどり着いた極点にはすでにノルウェーの国旗が…

肩を落として帰国する隊員には気力も体力もありません。

栄養状態の悪化予想よりも早く来た冬。南極の厳寒に石油缶は破裂して燃料も不足しています。

隊員は一人また一人と死亡。とうとうスコット隊長までが死んで隊は全滅。

これが世界最悪の旅です。

本の著者チェリーガラード・アプスレイは、探検の序盤にのみ参加した第一次帰国隊の学者で、自身の記憶とスコット隊長らの残した日誌をもとにこの本を書いています。

エンデュアランス号漂流記

1909年、南極大陸近くの海で遭難したエンデュアランス号の船長アーネスト・シャクルトンの書いたドキュメンタリー本です。

これをお勧めする理由は、こちらの漂流は全員生還のハッピーエンドだからです。

淡々と綴られた記録の中に光る、生きようとする意志の力、どんな状況でも希望を探そうと努力する人間の強さ。

読み切った時には実に爽快な気分になれます。

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アラスカ物語

19世紀の終わりごろ、アラスカイヌイット女性と結婚しイヌイットとして生きたフランク安田という日本人の実話です。

さすが新田次郎

最初のページで極夜のアラスカに連れて行かれます。

イヌイット社会では他者を罰することはほとんどなく、たいていは自分で自分を罰する。たとえば多くの者が「この人は死ぬべきだ」と思えば、当人はその雰囲気を察して自殺するのだと、ドラマのレディサイレンスはあの後死んだのだろうなと想像させる一説も。

(原作「ザ・テラー」の結末はドラマとは違います)

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英語イヤじゃない人はこれを

CAPTAIN FRANCIS CROZIER

フランシスの伝記です。

地元アイルランドでフランシスは「unsung hero」と呼ばれているそうです。

unsungとは「歌われない」

多くの偉人のように詩歌に歌われることがなかった英雄という意味です。

本はフランシスの功績を再評価する作品になっています。

易しめの英語でするする読めるので多読をしている人にも。

Frozen in Time

フランクリン遠征に関する本の中でおそらくこの本が世界で一番読まれているのではないかなと思います。

海外のブログなどでフランクリン遠征のことを話題にしている人の多くが、これを参考資料として挙げています。

隊員全滅の謎を科学的に考察している本です。

付録:内容はほぼ関係ないおすすめ本

狂気の山脈にて

ラブクラフトの小説です。

南極の話ですが、物語に登場するテラー山の「テラー」は、フランシスの船のテラーです。

ジェームズ・ロスが隊長兼エレバス号艦長、フランシスが副隊長兼テラー号艦長として南極を探検した際に発見されたふたつの火山にそれぞれの名前を付けたのです。

ストーリーは「ザ・テラー」とは関係ありませんが、ラブクラフト作品の中でも傑作と言われる一作なのでぜひ。

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翻訳が違っていてもいいよという方は青空文庫でも。