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鬼平外伝「老盗流転」登場人物キャストとあらすじ感想など

2019年4月8日

鬼平外伝」は時代劇専門チャンネルのオリジナルドラマで2011年から2016年までの間に全5本が制作公開されました。

池波正太郎作品から作られたドラマですが「鬼平犯科帳」ではなく「にっぽん怪盗伝」「江戸の暗黒街」に収載された短編小説を原作としています。

「老盗流転」

鬼平外伝 老盗流転ろうとうるてん」は、2013年公開の作品。

原作は池波正太郎「江戸の暗黒街」に含まれる短編「殺(ころし)」です。

鬼平外伝「老盗流転」登場人物とキャスト

桑飼の弥右衛門(くわがい-の-やえもん)

演:立川三貴

大盗賊の頭

このところ金回りが悪く、自ら立てた「人殺しはしない」という誓いを踏み外しかけている

黒塚の駒吉(くろつか-の-こまきち)

演:高橋光臣

弥右衛門配下の古株の盗賊

水鶏の松蔵(くいな-の-まつぞう)

演:國村隼(35年前は加治将樹

弥右衛門配下の古株の盗賊

高根の万助(たかね-の-まんすけ)

演:佐藤銀平

弥右衛門配下の盗賊

弥右衛門に取り入り、古参の駒吉、松蔵を押しのけて側近についている

立場の久六(たてば-の-きゅうろく)

演:福本清三(35年前の役者さんは不明です)

弥右衛門配下の盗賊

万助に調子を合わせている小物

岡村九兵衛

演:五代高之

北町奉行所の同心

桑飼一党の人相書き綴りを残して死ぬ

井原新十郎

演:山田純大

火付盗賊改めの同心

清蔵(せいぞう)

演:益岡徹

岡っ引き

赤不動の喜兵衛(あかふどう-の-きへえ)

演:寺田農

殺しの仲立人なかだちにんで、殺し屋に渡りをつける役目

徳兵衛(とくべえ)

演:橋爪功

小物問屋井筒屋の旦那。評判はいい

おもん

演:若村麻由美

徳兵衛の若い女房

宗次郎(そうじろう)

演:細山田隆人

井筒屋の番頭

船松の権太郎(ふなまつ-の-ごんたろう)

演:高杉亘

芝田町辺りの遊び人

鬼平外伝「老盗流転」あらすじネタバレなし

盗賊の内紛

江戸を悩ます大盗賊桑飼くわがい弥右衛門やえもんが「来月八王子の佐野屋を狙おう」と言います。

古参の松蔵駒吉は「そんな無理押しはだめだ」と反対しますが、弥右衛門は「今どき本格のおつとめなどしていられない」と一蹴。

このところ弥右衛門の手口が急ぎ働きに変わり、駒吉と松蔵は一党の今後に不安を感じています。

一方万助は「駒吉と松蔵はわきまえがない。親方になりかわるつもりではないか」と弥右衛門をそそのかします。

ある夜、弥右衛門らが駒吉と松蔵を襲いにやって来ました。

とっさに腕で松蔵を後ろへ押し込め矢面に立つ駒吉

乱闘になり、弥右衛門の手下久六きゅうろくは額に負傷。弥右衛門は死にました。

追分の別れ

逃げ出した駒吉と松蔵は、上方かみがたへ向かいますが、ふたりが一緒にいれば見つかりやすくなると考え、ちょうどそこにあった追分で左右に別れることにしました。

「これっきり他人。何があっても恨みっこなし」「どこかで会っても知らない者同士だ」と言って、ふたりは別の道を進んで行きます。

三十五年前の出来事です。

食い逃げ爺さん捕まる

江戸の小さな料理屋で老いぼれの爺さんが無銭飲食の上強盗しようとして十手持ちの清蔵に捕まります

それだけのことでしたが、爺さんを番屋に連れ帰った清蔵は、火付盗賊改め井原を呼びました。

清蔵の手元には、かつての奉行所同心岡村が死の間際に清蔵の父に預けたという桑飼の弥右衛門一味の人相書きがあり、そのうちのひとり、久六という男の額に描かれた傷が、この爺さんと同じだと気付いたのでした。

人相書きから三十五年。

生きていればこれくらいの歳でおかしくありません。

爺さんは、井原に「あんたは久六か」と聞かれると「そうだ」と答え、「万助の行方は知らないが駒吉なら昨日江戸で見た」と言います。

井原と清蔵は「どこで見たのだ」と問いますが、それを言う前に久六爺さんは息絶えてしまいました。

殺しの仲立人

川にぽつりと浮かんだ船の上。

密談を交わす男がふたり。

三十両を受け取った赤不動の喜兵衛きへえは別の場所で浪人風の男にその金を渡します。

「これは前金で、殺しが済めばもう百両」

それがこの取引の条件のようです。

金を受け取ったのは松蔵。今は殺し屋を雇う仲立人なかだちにんをしているのでしょう。

今度会うのはあの世かね

殺しの仲立人をしている松蔵に対し、駒吉は徳兵衛という名で大店おおだなを持っています。

ふたりは小さな橋の上で偶然すれ違い、立ち止まって振り向きました。

「生きてたのかい」

三十五年ぶりの再会です。

「どこかで会っても知らない者同士だと約束したはずなのに、つい懐かしくて声をかけちまった」と話すふたりは、酒を酌み交わして静かに再会を喜びます。

しかし互いに今の身の上は明かしません。それが盗賊の流儀です。

駒吉が松村町近くに暮らしていると聞いた松蔵が「井筒屋の徳兵衛を知っているかい」と尋ねます。

何気ない調子で駒吉が「どうしてだい」と聞き返すと松蔵は言いました。

殺してくれと頼まれてね

いつかの密談は、井筒屋の旦那殺しの手配でした。

駒吉は、自分が徳兵衛だとは打ち明けず、ふたりは「今度会うのはあの世かね」と言って別れました。

鬼平犯科帳「老盗流転」あらすじネタバレ版

以下はネタバレです。

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女房のおもんと番頭の宗次郎

その日から徳次郎は、外へ出かけなくなります。

お得意様の外商も番頭の宗次郎そうじろうをひとりで行かせました。

今日は「本願寺へ行く」と言って店を出ると向かいの宿から店を見ています。

若い女房のおもん出て行き、すぐに宗次郎が同じ方へ向かいました。

その夜徳兵衛はおもんに「いつ死ぬか分からないから今のうちに宗次郎を養子にもらおうかと思う」と持ち掛けます。

するとおもんは強く反対し「宗次郎を養子にするならここを出ていく」とまで。

ふたりの不貞は疑いようがありません。

徳兵衛はぽつりと「あさって宗次郎を連れて赤坂の佐々木様へ行く時、養子の話をしようと思っていたから、お前の気持ちを聞いてよかったよ」と言いました。

「あさって」

おもんの目が怪しく光っています。

徳兵衛の一計

外商の帰り、うなぎ屋の座敷で徳兵衛は宗次郎に「お前が旦那で私が番頭のふりをして帰ろう」と言い出します。

荷物を徳兵衛が担げば人はきっと徳兵衛の方を番頭と思うに違いない。面白いじゃないかと。

宗次郎にはわけがわかりませんが断り切れず、ふたりは逆さまの立場に化けて店を出ました。

すっかり暮れた暗い道を、旦那役の宗次郎が先に立って歩きます。

角から出て来た浪人が刀を一閃。宗次郎は徳兵衛と間違われ、斬られて死んでしまいました。

真相

慌てたのはおもんです。

「人違いで番頭が死んじまったよ」

おもんがそう言って駆け込んだ家から出て来た派手な羽織の男は「それでも宗次郎が養子になっていなくてよかった」「養子などとられたら俺たちの取り分がなくなる」

おもんが手を組んでいたのは、宗次郎ではなくこの男、船坂ふなさか権太郎ごんたろうでした。

男が引き込んだらしい女をきつい目で見るおもんは、この男に恋着しているのでしょう。

井原と清蔵の調べ

井筒屋には井原と清蔵がやって来て、徳兵衛に事情を聞いています。

徳兵衛がちょっとした座興で宗次郎と立場を入れ替えたことを話すと、井原は「旦那が狙われたんじゃないか」と言います。

「井筒屋さんを悪く言う人はいない」としながらも「人違いと分かったらまた狙われるかもしれないから気をつけろ」と言い残してふたりは帰りました。

松蔵、徳兵衛が駒吉と知る

おもんは、松蔵のいる遊郭「きねや」にねじ込み「なぜ人違いしたのだ」と詰問します。

言われた通り「旦那を殺せ」と伝えた松蔵は合点がいかず、ひそかに井筒屋を見に出かけました。

橋の欄干に隠れて覗く井筒屋の前で「旦那さん」と声を掛けられている男は駒吉でした。

でも人違いした殺し屋の浪人は、残りの百両がもらえないと聞くと「もう一度やり直して徳兵衛を殺す」と言って聞きません。

一方再び井筒屋を訪ねて来た清蔵は、徳兵衛の顔をじっと見て、桑飼の弥右衛門一味の駒吉と似ているのに勘付きます

おもんの身の上を調べる徳兵衛

十五年ほど前に江戸へ戻り、やっとのことで店を持った徳兵衛が水茶屋で見初めたのがおもんでした。

その茶店で聞くと、そこへ来る前は芝の医者の後妻だったと教えられます。

医者のいた家の大家は、おもんを田町の遊郭の女だったと言いました。女房を亡くした医者が身請けしたのでしょう。

その医師が死ぬとおもんは、船松の権太郎という遊び人に入れあげ、有り金を全部取られたと言います。

近くの居酒屋では、おもんがつい最近もここで権太郎と会っていたことが分かりました。

最後に徳兵衛が訪れたのは田町です。

田町五光稲荷ごこういなり前のきねやという遊郭におもんがいたと聞いていたからです。

そこで徳兵衛が見たのは、きねやの前で立ち話する松蔵でした。

おもんが松蔵を介して殺し屋を雇ったことは間違いありません。

おもんと徳兵衛

それまで徳兵衛はおもんに生い立ちを聞いたことがありませんでした。

突然「生まれはどこだ」と尋ねる徳兵衛をいぶかしみながらおもんは「親の顔を知らない」と語りはじめます。

おもんは、生まれてすぐに捨てられ、暮らす家もないまま寺や神社の縁の下で寝て育ちました。

大事に持っているほころびたお守り袋は、捨てられた時にたったひとつ持っていたものだったのです。

徳兵衛も同じみなしごだったことを告白します。

代々のおたなの跡取りだと思い込んでいたおもんの初めて聞く話でした。

盗みで身を立てて育ち、いざこざで江戸を離れた徳兵衛です。話せる過去ではなく、これまで何も言わなかったのでしょう。

外を吹く風の音を怖がって耳をふさぐおもんに徳兵衛は「風も怖かったが、今はお前が去ることが怖い」と漏らします。

おもんの心の中の何かが動きました。

おもんの血

おもんは、権太郎を訪ね「井筒屋の旦那さんを殺すのはやめにしよう」と告げます。

「もうお金はいらないよ」と言うおもんに権太郎は逆上し、おもんの背中を刺しました

おもんが死んだら徳兵衛を殺しても権太郎に金が渡ることはありません。愚かな男です。

流れる血を手に取り「私の血温かいんだ」と言いながらおもんは死んでいきます。

松蔵、権太郎を刺す

そこへ今度は、なんとか徳兵衛殺しをやめにしたい松蔵がやって来ました。

権太郎は、惨状に息をのむ松蔵に襲い掛かりますが、松蔵は落ち着いた態度で権太郎を刺して殺します。

権太郎の引き込んでいた女が悲鳴を上げています。

女は「これでも昔は水鶏くいなの松蔵と呼ばれた男だ」という台詞を聞いていました。

松蔵は、赤不動の喜兵衛に「頼んだ当人が死んだので徳兵衛殺しは無しに」と伝えて姿を消します。

松蔵、久六、駒吉

井筒屋に清蔵が来て、宗次郎とおもんのふたりが立て続けに死んだのを面妖なことと言っています。

権太郎を刺した男が松蔵と名乗ったことも。

食い逃げの久六は「つい最近駒吉を見た」と言い、今度は松蔵が人を刺して行方をくらます。

ここへ来て桑飼の弥右衛門一味の名がよく上がるのはどうしたわけか」…と意味ありげに言われ、徳兵衛は江戸を離れることにしました。

十字路

どこかの道、そう広くはなく人気ひとけもない道を徳兵衛が歩いています。

道が少し先で交差する、その曲がり角に向かって反対側から松蔵が来ました。

十字路でふたりは目も合わせずにすれ違い、そのまま離れて行きます。

三十五年前の約束は今果たされ、ふたりが言葉を交わすことはもうありません。

今度会うのはあの世です。

鬼平外伝「老盗流転」の感想

駒吉だけでなく松蔵もきっと孤児で身内らしい者はいないでしょう。

岐路を別々に進めば、孤独の荒野が待っています。

でもこの友情は悲劇を呼ぶよう運命が定めていると知るふたりは、別れるよりほかありません。

そうと分かっていながら、ふたりが十字路へ進むとき息を止めて見ていました。すれ違った瞬間にはため息と落涙。

でも、歩を緩めることすらなくすれ違うふたりは究極の以心伝心です。これでいい…のですよね。

ストーリーもテーマも全く違うのに見終わった時の心境は「ゴッドファーザー」を見た後のよう。

フィルムノワールの味わい。傑作でした。

原作短編集「江戸の暗黒街も注文しました。この作品を知ることができて良かったです。

→原作「殺」は、ドラマ「老盗流転」とは全然違う話でした(笑)

その他鬼平外伝各話リンク

第1作「夜兎の角右衛門

第2作「熊五郎の顔

第3作「正月四日の客

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